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健康

脳は休んでいない——エンジニアが知っておくべき「脳疲労」の正体と本当の回復法

「十分寝たのにコードが頭に入らない」——その原因は脳疲労かもしれません。『不夜脳』の知見をもとに、エンジニアが陥りやすい脳疲労の正体と、科学的に正しい回復法を解説します。

脳は休んでいない——エンジニアが知っておくべき「脳疲労」の正体と本当の回復法

はじめに

「8時間寙たのに、午後になると頭が重い」「休日にゆっくりしたはずなのに、月曜日も疲れている」——そんな経験はないでしょうか。

多くのエンジニアが感じるこの「なんとなくの疲れ」は体の疲労ではなく脳疲労が原因である可能性があります。

そして、一般的に信じられている「休息の常識」が、実は脳科学的に間違っている場合があります。
東島威史氏の著書『不夜脳 脳がほしがる本当の休息』をもとに、エンジニアが知っておくべき脳疲労の正体と本当に効果のある回復法を紹介します。

「脳は休んでいる」は誤解だった——不夜脳という概念

私たちは「睡眠中は脳が休んでいる」と思いがちです。
しかしそれは正確ではありません。

不夜脳は、「無理をして 24時間活動している」のではなく、「休まないことこそ、脳に最適の働き方」といっていい。

脳は睡眠中も、記憶の整理・ホルモンの調整・老廃物の排出など、重要な処理を行い続けています。睡眠とは「脳のための休息」というより、体全体の効率的なエネルギー管理システムです。

これが「不夜脳」という概念の核心です。
脳は休まないのではなく、休まないことが脳の正常な姿なのです。

脳疲労の正体:疲れているのは「脳全体」ではない

「脳が疲れた」と感じるとき、実際に何が起きているのでしょうか。

脳疲労の2パターン

「脳疲労」の正体とは 2つのパターンが考えられる。
①血流や代謝が集中している部位が、それ以上の刺激を拒んでいる
②血流や代謝が低下した部位が、刺激を求めている

コードを長時間書き続けると、論理的思考を担う前頭前野が酸使されて疲弊します。
すると①の状態、つまり「もう限界です」という信号が出ます。
これが「脳が疲れた」という感覚の正体です。

一方で、ずっと画面を見ていると、視覚や感覚、創造性に関わる別の脳の部位は逆に刺激不足(②の状態)になっています。

「別の刺激」が回復になる理由

脳疲労とは、脳のバランスが偏った状態であり、代謝が落ちている部位を「刺激する」ことで、ある程度改善するはずだ。

脳疲労は「脳全体の消耗」ではなく、使い方の偏りから生まれます。
だとすれば、休息の正解は「何もしないこと」ではなく、「別の種類の刺激を与えること」です。

  • コードを書いて疲れた → 散歩して景色をめどめる
  • 論理的な作業が続いた → 音楽を聴く・絵を描く
  • 画面を見続けた → 読書・会話

これは「気分転換になるから」という感覚論ではなく、脳科学的に理にかなった回復法です。

睡眠と集中力の本当の関係

「よく寝ると集中力が上がる」——これは本当でしょうか。

集中力と睡眠の関係については「たっぷり眠ると集中力が上がる」のではなく、「たっぷり眠ると、覚醒時の脳の指令がスムーズになる」というほうが正確だと私は考えている。

この違いは微妙に見えて、実は大きな意味があります。
睡眠は集中力を「高める」のではなく、「妨げるものを取り除く」という理解が正確です。

エンジニアとして実践すべきことは、「たくさん寝て能力を上げよう」ではなく、「睡眠の質を確保して、持っている能力を100%発揮できる状態を作ろう」という視点の転換です。

DMN——ぼーっとしているときに脳は最も疲れる

「休日にゴロゴロしていたのに疲れが取れない」という経験はないでしょうか。
これにはDMN(デフォルトモードネットワーク)という脳の仕組みが関係しています。

DMNとは特定の作業をしていないとき——ぼーっとしているとき、スマホをながめているとき、過去を振り返ったり未来を心配したりしているとき——に活性化する脳のネットワークです。

Marcus Raichleらの研究によると、DMNは脳の総エネルギーの60~80%を消費するとされています。意識的な作業(コードを書く、計算するなど)が使うエネルギーはたった5%程度です。

つまり、休日にスマホをながめながSNSをスクロールしたり、仕事のことをぼんやり心配したりしていると、脳は最もエネルギーを消耗している状態になります。
「何もしていないのに疲れている」の正体はこれです。

DMNを鎮める方法

DMNの過剰な活動を抑えるには、「今、この瞬間」に意識を向けることが有効です。

  • マインドフルネス瞑想:呼吸に意識を集中させることで、過去・未来への思考(=DMN)を止める
  • 単純なリズム作業:散歩・猸洗い・掛除などは、意識を「今」に固定しやすい
  • 自然の中での散歩:スマホなしで景色をめどめるだけで、DMNが静まりやすい

逆に避けるべきは休桬中のSNSチェックや仕事に関わる情報のインプット。
次々と新しい情報を処理し続けることで、脳全体の疲労が蔓積されます。

「忘れる」ことも脳の重要な機能

エンジニアとして、「記憶力を高めたい」「忘れたくない」と思う場面は多いと思います。
しかし、忘却は脳の欠降ではありません。

「忘却」とは脳の重要な機能であり、人は忘れることで重要な情報を「素早く」引き出しやすくしている。

脳は不要な情報を削ぎ落とすことで、必要な情報へのアクセスを速くしています。
「削ぎ落としながら磨く」という概念はソフトウェアのリファクタリングに似ています。
コードの量を減らしてパフォーマンスを上げるように、脳は記憶を整理することで効率を高めています。

重要な情報はメモやドキュメントに残し、脳に不必要な記憶を強制しないことも脳疲労を防ぐ習慣の一つです。

エンジニアへの実践:脳を偏らせない働き方

これまでの知識をもとに、エンジニアが日常で実践できることをまとめます。

作業中

状況

実践

長時間コードを書いた後

画面から離れ、遠くをめどめる・軽い散歩

集中できなくなった

別の種類のタスクに切り替える(設計→コード→ドキュメント)

休憩中

SNSを見ない。目を閉じるだけでも効果あり

睡眠

意識すること

理由

就寝1時間前にスマホを手放す

DMNを鎮め、脳のエネルギー消費を抑える

睡眠時間より「入眠の質」を重視

脳の指令がスムーズになる状態を作るため

寝る前に翌日のタスクをメモしておく

脳が「忘れないように」と働き続けるのを防ぐ

休日

やること

やらないこと

スマホなしの散歩

休日中の仕事メールチェック

読書(特に小説・エッセイ)

SNSのスクロール

料理・掛除などの単純作業

ぼんやりしながYouTubeを流し見

まとめ

一般的な誤解

脳科学的に正しい理解

睡眠中は脳が休んでいる

脳は24時間活動している

脳疲労=脳全体の消耗

脳の使い方の「偏り」が疲労の正体

よく寝ると集中力が上がる

睡眠で脳の指令がスムーズになる

何もしないと脳が休まる

ぼーっとするとDMNが活性化し最もエネルギーを消費する

忘れることは悪いこと

忘却は重要情報を引き出しやすくする脳の機能

「脳疲労」は根性論や気合いで解決できるものではありません。
脳の仕組みを正しく理解したうえで、意図的に「偏りを解消する」働き方と休み方を設計することがエンジニアとして長く高いパフォーマンスを維持するための鍵です。

まず今日からできることは一つ。休憩中にスマホを手放すだけで、脳の状態は変わり始めます。