はじめに
仕事でトラブルや障害が起きたとき、自分のミスではないとわかっていても心がざわつくことはないでしょうか。
対応中は冷静にふるまっていても、頭の中では「自分のせいかもしれない」という考え方が浮かんでは消えません。
この記事では、そうした仕事のトラブルへの向き合い方について、私自身の経験とストア哲学の考え方から書きます。
トラブルへの反応は人によって違う
同じ障害やトラブルが起きても、心の乱れ方は人によって大きく違います。
原因を調べ、影響範囲を確認し、関係者に連絡する。
手順としてやることは同じでも、心の中で起きていることはまったく別です。
私自身、仕事で発生するトラブルについて振り返ると、自分のミスによるものと、外部要因によるものがはっきり分かれています。
もちろん自分のミスであれば反省しますし、改善すべき点もあります。
しかし、自分のミスではないトラブルについては、責任を感じていないことに気づきました。
多くの場合、心が乱れる原因は「トラブルそのもの」ではありません。
「これは自分の責任だろうか」という解釈を、意識的に分けていないことが原因になっているように思います。
自分の責任かどうかを決めつける前に心がざわついてしまうのは、この区別ができていないからではないでしょうか。
変えられるものと変えられないものを区別する
ストア哲学には、物事を「自分の力で変えられるもの」と「変えられないもの」に分けて考える、という発想があります。
感情・判断・態度は変えられるものです。
他人の反応・環境・過去に起きた出来事は変えられないものです。
仕事のトラブルに当てはめると、障害が発生したという事実そのものは変えられません。
すでに起きてしまったことであり、過去に属する出来事です。
変えられるのは、そのトラブルをどう解釈し、どう向き合うかという自分の態度の部分だけです。
ここで変えられないものに意識を向け続けると、抵抗するだけ心が乱れます。
反対に、変えられる部分である解釈や態度に意識を向けると、同じ状況でも心の動き方が変わります。
この区別を自分の中で明確にできているかどうかが、トラブルに対する反応の差を生んでいると感じています。
話は少し脱線しますが、ジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー2』で紹介されている「ストックデールの逆説」という考え方も、この区別と近いものがあります。
現実がどれだけ厳しくても、それを直視しながら、最終的には必ずうまくいくという確信を同時に持ち続ける。
現実そのものは変えられないと受け入れつつ、それにどう向き合うかという態度の部分では前向きでいる。
この両立の姿勢は、仕事のトラブルに向き合うときにも参考になる視点です。
トラブルを成長の機会と解釈し直す
変えられない部分を受け入れたうえで、解釈をどう選ぶかには幅があります。
私が実際に取り入れているのは、トラブル対応を「やってあげている」という意味づけに転換することです。
自分のミスではないトラブルに対応するとき、義務感だけで取り組むと疲弊しやすくなります。
そこで「下の世代のために、自分が今対応している」というように意味づけを変えると、同じ作業でも気持ちの負担が軽くなります。
対応そのものの大変さは変わりませんが、その大変さをどう受け止めるかは自分で選べる部分です。
もう一つの解釈は、トラブルを「その機能について知る機会」として捉えることです。
障害が発生した部分は、普段あまり触れないコードやシステムの仕組みであることが多くあります。
トラブル対応を通じてその機能の内部を理解できたと考えると、同じ出来事が成長の機会に変わります。
ライアン・ホリデイの『苦境(ピンチ)を好機(チャンス)にかえる法則』という本では、障害そのものではなく、障害をどう解釈するかという「ものの見方」は自分で選べるという考え方が紹介されています。
また、ジョン・ソンメズの『SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル 第2版』でも、ストア哲学に倣って自分でコントロールできることに力を集中させ、出来事の善し悪しは自分の解釈次第だと捉えるという考え方が書かれています。
どちらの本からも、トラブルへの意味づけを変えるという視点を学びました。
エンジニアの障害対応で実践するなら
障害対応の最中は、原因調査や連絡対応で手がいっぱいになります。
そんな中でも、自分の中で一言だけ問いかける余地を持てると、心の乱れ方が変わります。
「これは自分が変えられる部分か、変えられない部分か」という問いです。
障害が発生したという事実、すでに起きてしまった影響範囲、他のメンバーの反応。
これらは変えられない部分です。
今この瞬間にどう対応するか、この経験をどう解釈するかは、変えられる部分です。
この切り分けを意識すると、何が変わるのでしょうか。
まず、自分の責任ではない部分まで抱え込んで疲弊することが減ります。
次に、対応そのものに追われているときでも、「今は変えられる部分に意識を向けている」という感覚が持てるようになり、心の余裕が生まれやすくなります。
対処の手順自体は変わりませんが、同じ手順をどんな心持ちで進めるかは、この視点の有無で大きく変わると感じています。
まとめ
仕事のトラブルや障害そのものを変えることはできません。
しかし、それをどう解釈し、どう向き合うかは自分で選ぶことができます。
変えられないもの(他人・環境・過去に起きた出来事)に抵抗せず、変えられるもの(解釈・態度)に意識を向けることで、心が乱されにくくなります。
次にトラブルや障害対応で心がざわついたときは、「これは自分が変えられる部分か」と一度問いかけてみてください。
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